クロスボーダー株式会社COO荻原慎太郎氏

今回は、多くの日本人選手が所属するシント=トロイデンVV(以後、STVV)のスポンサーとなったCrossBorder株式会社にインタビューをさせていただいた。

インタビューを受けていただいたのは取締役COOの荻原慎太郎氏。20年近くサッカーをしてこられた大のサッカー好きだ。

荻原氏曰く、CrossBorder株式会社はレアル・マドリードのように縦に速く柔軟な体質であり、そしてご自身はCOOとしてアンチェロッティ監督のようにチームをまとめていきたいとのこと。

ではこれらは具体的にどのようなことなのか。STVVのスポンサーになったきっかけや同社のビジョン・取り組みなどを深掘りしていこう。

「枠組みを超えた挑戦」ビッグクラブへの架け橋となるSTVVの取り組みと一致

荻原慎太郎氏

━━━まずは自己紹介からお願いいたします。

CrossBorder株式会社取締役COOの荻原慎太郎と申します。私は幼稚園から大学までの間、20年近くサッカーをしておりました。社会人になってからは、大手企業とスタートアップ企業を経て、今の会社を起業しました。

現在我々は営業の新規開拓を支援するサービスを展開しているのですが、私はCOOとして会社のビジネスサイドを統括する役割を担っています。本日はよろしくお願いいたします。

━━━次に企業の概要を教えていただけますでしょうか。

2021年に発足した会社です。会社としてはまだ2期目なのですが、人数は業務委託の方を含めて約50人ほどの組織となっております。

我々は「枠組みを超えた挑戦」というミッションを掲げており、今までの形では解決できなかった課題を解決するための事業を運営しております。

━━━具体的に「枠組みを超えた挑戦」とはどのような挑戦なのでしょうか。

今展開している事業である営業やマーケターの方向けの新規獲得商材に絡めて説明いたします。

例えば営業パーソンが売上目標に対して達成できていないという状況が続いているとします。売上目標達成に向けて営業活動を続けていたとしても、成果が出ていないとストレスやプレッシャーで疲弊してしまう方も多いのではないでしょうか。

そのような状況を、従来活用されてこなかったビックデータやAIなどのテクノロジーを用いて解決することによって、その方々が今まで実現できなかった目標を達成できたりすることもあります。私たちはそのような新たなテクノロジーを活用することで営業課題を解決しています。

荻原慎太郎氏

また、話を広げると、仕事で上手くいっていると心身ともに余裕がでますので、プライベートにも活力が生まれると思います。営業の課題を解決することで、その人が人生において本当にやりたいことの手助けになり、今までできなかった「挑戦できる世界」になるのではないかと考えています。

我々は「枠組み」というものを「従来の方法」「常識」と捉えているのですが、データやテクノロジーを使うことにより、この「枠組み」によって制限されていた「挑戦」を解放することができればと思っています。

さらに、我々の会社自体もそのような概念に捉われず挑戦することによって、伝染していくのではないかと考えております。

━━━今回STVVのスポンサーになられたきっかけは何でしょうか?

きっかけは2つあります。

まず、先述の通り、我々の会社のミッションとして「挑戦」を掲げておりますが、この「挑戦」はスポーツと共通点があると思っております。

その中で、STVVさんはベルギーに拠点を置きながら、日本人選手が海外に行くための礎となるような、まさに「挑戦」を支えるようなポジションであると感じました。

今回この部分に共感し、ぜひ我々もスポンサーという形で応援させていただければと考えました。

荻原慎太郎氏

次に、私自身が学生時代にずっとサッカーをしていたのですが、サッカーで人生の土台ができたと感じております。このような形でサッカーに少しでも携わることができればという思いもあり、スポンサーをさせていただくことにしました。

━━━やはり「挑戦」という部分がSTVVと御社の共通点なのですね。

そうですね、STVVの取り組みも新しいと思っております。今までで言うと、日本人選手は、Jリーグで活躍して代表に選ばれ、アジアカップやワールドカップで注目されて初めて海外に挑戦できるという流れが多かったと思います。

しかし、STVVがあることにより、STVVを経由してビッグクラブに行くことができるという意味では、挑戦する選手たちにきっかけを与えながらも、STVV自体の取り組みも新たな挑戦なのではないかと感じております。

「サッカーで例えるとアナリスト」データを使って営業パーソン(選手)を支える

CrossBorder株式会社

━━━御社ではどのような事業を展開されていますか?

法人向けの新規開拓の支援をBtoBセールスインテリジェンス「Sales Marker(セールスマーカー)」というプロダクトを通じて行っております。こちらは、新規開拓の成功確率と効率を向上するターゲティングや戦略立案、具体的な会社のリストアップ、ABMアプローチなどを支援する事業です。

従来は「とにかく数をあたる」という営業活動が多かったのですが、我々は「どこにあたるべきなのか」を大切にしております。

インターネットの行動履歴データを分析することによって自社商材に興味を持っている企業、受注に近いクライアントを特定することを技術的に行っておりますので、同じリソースを投入しても確率が向上します。結果的により高い成果を実現するということを、このプロダクトおよびコンサルティングを絡めながら支援しております。

━━━量より質を重視しているというイメージでしょうか。

質も大切ですが、営業パーソンとしても事前に相手がどのような課題やニーズを持っているかを知った上でコミュニケーションを取った方が、何を訴求するべきかが明確になります。

今までは仮説ベースだったのですが、このような情報を活用することによって、その対象企業がどのような背景であるか、また今どのような状態なのかが分かるようになります。

荻原慎太郎氏

その面で言うと、最近サッカーでも様々なデータを測るテクノロジーが出てきています。これらは選手たちがパフォーマンスを上げやすいようにテクノロジーを用いて支援することになりますが、営業パーソンを我々が支援することに近しいものがあるのではないでしょうか。

━━━最近のサッカー界では、今まで見られなかった部分も見えるようになってきました。

まさにその位置付けです。サッカーでいうプレーヤーが我々でいう営業やマーケターの方々になるのではないかと思います。

サッカー界でもデータ事業が進んでおり、相手チームの分析や自チーム選手個人の分析などが頻繁に行われています。これが選手のパフォーマンス向上やチームの勝率アップにつながっていると思うのですが、我々はビジネス面で同じように活用しており、営業パーソンやマーケティング領域におけるデータを分析し、より良いアクションを起こせるようにしています。

我々の主役は営業パーソンやマーケターの方々であり、立場的にはサッカーのアナリストに近いと思っています。

同じベクトル、臨機応変な対応、それをまとめるアンチェロッティ

CrossBorder株式会社

━━━会社や社員はどのような雰囲気でしょうか?

社員は個性的で様々なバックグラウンドの方がいます。国籍も日本の社員だけではありません。そんな中で、それぞれの意見が飛び交うような活気のある組織です。

しかし、個性こそ強いですが、皆の向かうベクトルは一致しています。仮に意見が割れた時は「目的に戻ること」が重要だと思っており、「取り組むべきことに対する目的は何か」という部分に目線を持っていきます。

この辺りもサッカーに例えられます。それぞれの選手は個性が強かったとしても、共通の目的は勝利です。弊社の会社組織は、この「勝利」に向かって一致団結していると自負しております。

━━━それぞれの役割はどのように分担されているのでしょうか。

それぞれが強みを生かし、分担して業務を行うケースもあります。ですが、ベクトルが一緒であるため、自分の業務のみをやっておけばよいという考えを持つ人はほとんどいません。

自分の業務プラスαで、自分の会社に足りないものがあればプロジェクトを立案して推進していく方もいますし、完全リモートワークの中でも「このような取り組みがあればより親睦が深まり、コミュニケーションがスムーズになるのではないか」と組織的に改善を試みる方もいます。

荻原慎太郎氏

━━━連携という意味ではバルセロナのティキ・タカと近しい部分があるのではないでしょうか…?

我々はもう少し縦に速いので、レアル・マドリードに近いかもしれません!(笑)バルサのように哲学がはっきりとしていて、同じポジションに誰が入っても同じ動きをしてゲームを支配するというよりは、「ゴールに向かって最短距離で行く」「出てくる選手によってゲームプランが変わる」というイメージです。

━━━荻原様はCOOとしてどのようにまとめ上げていきたいとお考えでしょうか。

先ほどレアル・マドリードのお話しがでましたが、アンチェロッティのような立ち回りをしたいと思っております!

━━━と言いますと?

あえてペップ・グアルディオラと比較します。ペップは自分の哲学を自分のチームに落とし込むタイプだと思うのですが、アンチェロッティは今いる選手の強みや特徴を見極めて、このメンバーが最大限に活躍してチームが強くなるためにはどのような戦術を取り入れるべきか、どのような役割を監督として担うべきかという思考を徹底していると思っています。

荻原慎太郎氏

先ほど申し上げた通り、弊社には個性がある優秀なメンバーが多いのですが、私がプレーヤーとして前に出るというよりは、彼らの個性や強みを把握し、COOとして最大限活躍できるように環境の整備やサポートを行いたいと考えています。

まさにアンチェロッティのように、一歩下がったところから全体設計ができるような立ち回りができればと思います。

━━━確かにペップはバルサやバイエルン、シティでポゼッションという哲学を落とし込みましたが、アンチェロッティは臨機応変に対応して史上初の欧州5大リーグ制覇を達成しています!

まさしくそうですね。クリスティアーノ・ロナウドなどのインタビューを見たことがありますが、「アンチェロッティと仕事ができることが、サッカー選手として貴重な時間だった」といった発言をしており、皆アンチェロッティの人柄を好いているような気がします。

私が最も好きな選手はガットゥーゾなのですが、様々な面で激しい彼をもアンチェロッティはコントロールしていました。人心掌握術を持ち合わせていて、彼自身がリスペクトされる存在だったからこそ、まとまりができていたのではないかと思います。

中長期での海外進出へ、まずは国内で圧倒的に

荻原慎太郎氏

━━━では最後に今後の会社の展望について教えていただけますでしょうか。

今後もっと事業や組織を拡大し、より多くの方々の課題解決を行えるような事業にできればと考えております。

今は国内だけがターゲットになっていますが、中長期では海外進出も視野に入れておりますので、そこを目指しながら事業を推進していければと思います。

━━━現時点でのターゲット国はありますか?

まずは、中国や韓国、東南アジアなどのアジア諸国に進出したいと思っております。今我々が着手している領域の最先端は米国です。一方で、ローカライズ性が高いこのビジネス領域において、我々はアジアから展開していこうと考えております。

━━━団体と個人という違いはありますが、国内で力をつけて海外に進出するという意味ではサッカーと似ている部分もあるかもしれません。

そうですね、そのためにもまずは国内で圧倒的になる必要があると思っています。国内で多くのお客様に喜んでもらうことが大前提で必要です。ある程度のレベルに達してから海外進出という部分は、サッカーと似ているかもしれません。

━━━本日はありがとうございました。