ベイル

2021/22シーズン終了後、レアル・マドリーはガレス・ベイルの退団を発表した。ベイルは自身のSNSで『レアル・マドリーでプレーするという夢を実現したい若者として、9年前にやってきた。夢は現実となって、さらに多くの事を実現できた。決して忘れる事はないよ。栄光だった。ありがとう。アラ・マドリー!』と綴り、8年間在籍したマドリーに対して感謝の気持ちを公表した。

ベイルは2013/14シーズンの夏にトッテナムからレアル・マドリーに当時史上最高額となる1億100万ユーロの移籍金で入団。1シーズン目から活躍し、マドリーで多くのタイトル獲得に貢献した。輝かしい栄光がある一方で、数々の問題行動でマドリディスタを激怒させたのもまた事実だ。今回はベイルのマドリーでの栄光と非難を振り返る。

まずは、ベイルのマドリーでの記録を振り返ろう。


マドリーでの記録

ベイル

2013/14シーズン:44試合22ゴール

2014/15シーズン:48試合17ゴール

2015/16シーズン:31試合19ゴール

2016/17シーズン:27試合9ゴール

2017/18シーズン:39試合21ゴール

2018/19シーズン:42試合14ゴール

2019/20シーズン:20試合3ゴール

2020/21シーズン:0試合0ゴール

2021/22シーズン:7試合1ゴール

通算258試合:106ゴール、67アシスト

1試合平均0.41ゴール

1シーズン平均13.25ゴール

キャリアハイ : 2013/14シーズン 22ゴール

※2020/21シーズンはトッテナムにレンタル移籍


獲得タイトル


UEFAチャンピオンズリーグ 5回(2013/14,2015/16,2016/17,2017/18,2021/22シーズン)

リーガ・エスパニョーラ 3回(2016/17, 2019/20,2021/22シーズン)

コパ・デル・レイ 1回(2013/14シーズン)

FIFAクラブワールドカップ 4回(2014,2016,2017,2018年)

UEFAスーパーカップ 3回(2014,2016,2017年)

スーペルコパ 3回(2017, 2019, 2021年)

通算19個 (タイトル獲得数クラブ歴代8位タイ)


ベイルのマドリーでの歩み

ベイルは身体能力が非常に高く、圧倒的なスピードが武器。全盛期のロングスプリント能力は世界トップクラスだった。左足から放たれる強烈なシュートでゴールを量産。また、フリーキッカーとしても優秀だった。

クリスティアーノ・ロナウドが左サイドに君臨していたため、ベイルはマドリー入団後、主に右サイドでプレーした。ウェールズ人ウインガーは『次世代のバロンドール候補』『クリスティアーノの後継者』として期待されていた。ベイル、ベンゼマ、クリスティアーノ・ロナウドの頭文字を取った強力3トップ"BBC"の一角として何度もゴールネットを揺らした。

"ベイルのゴール"と言えば2013/14シーズンのコパデルレイ決勝バルセロナ戦で決めたあのゴラッソを思い出す人が多いのではないだろうか。この試合はエースのクリスティアーノ・ロナウドが欠場し、ベイルは左ウイングで出場。ハーフウェイライン付近から左サイドを独走し、決勝ゴール。後半40分とは思えない圧巻のスピードで当時のバルセロナDFバルトラを置き去りにした。

他にも2013/14,2017/18シーズンのUEFAチャンピオンズリーグ決勝などの大舞台で決勝ゴールを決め、マドリーにタイトルをもたらしてきた。

ベイルは個人としてもマドリー通算100ゴールも達成し、様々な栄光を掴んだが、マドリディスタからの人気が決して高かったとは言えない。

度重なる負傷とウェールズ代表


度重なる負傷。趣味のゴルフ中に負傷疑惑。招集拒否をしてゴルフを楽しむ。仲間のゴール祝福を追い払うなど数々の問題行動を起こした。その中でもベイルがマドリディスタに最も批判をされたのは2019/20シーズンに起こったあの事件だった。

ベイルは筋肉系の負傷でマドリーの試合を約1ヶ月間離脱していたが、ウェールズ代表の一員として挑んだEURO2020予選のアゼルバイジャン戦(2019年11月16日)で戦列復帰。一部では給与を払っているマドリーよりもウェールズ代表でのプレーを優先しているのではないかとの指摘もあった。

この試合中に、ウェールズ代表のサポーターたちは『Wales, Golf, Madrid(ウェールズ、ゴルフ、マドリー)』というチャントを歌った。このチャントはベイル自身の優先度の高いものを順番に表している。ベイルが所属しているレアル・マドリーよりウェールズ代表、さらには趣味のゴルフの方が優先度が高いというジョークを交えたチャントだ。

この試合の3日後、ハンガリー戦で事件は起きた。この日も同様にウェールズ代表サポーターは『Wales, Golf, Madrid.』のチャントを歌った。ウェールズ代表はハンガリー戦でEURO2020本大会出場を決め、ベイルはチームメイトと共にEURO本大会出場を祝っていた。そんな中、ウェールズ代表のある関係者が『Wales. Golf. Madrid. IN THAT ORDER(ウェールズ。ゴルフ。マドリー。この順番だ。)』と書かれたフラッグをウェールズ代表の選手たちに渡した。ベイルは真ん中で笑い飛び跳ねながら、『Wales, Golf, Madrid.』のチャントをチームメイトと共に歌った。

買ってしまったマドリディスタの反感


マドリーを煽るこの問題行動でマドリディスタの怒りはついに頂点に達した。代表ウィークが終了し、ベイルはマドリーに合流。2019年11月23日に、ホームのサンティアゴ・ベルナベウで開催されたリーガ・エスパニョーラ第14節レアル・ソシエダ戦でマドリディスタの怒りが大爆発。ベイルは後半途中から約50日ぶりにリーガ・エスパニョーラの試合に出場したが、ピッチに入る際にはベルナベウのマドリディスタから大ブーイングを浴びた。

スペインAS紙によると、この大ブーイングの音圧は90デシベルを記録。90デシベルは『極めてうるさい』レベルで、この騒音下では人との会話は出来ないとされている。

途中出場後、ベイルはボールに触れるたびにマドリディスタからブーイングを浴びた。さらに、スタジアムのあるサポーターは『ロドリゴ、ヴィニシウス、ルーカス・バスケス、ベイル。この順番だ』というフラッグを掲げ、ウイングでポジションを争うベイルに対して報復した。そして、スペインのあるサッカー番組はベイルに対してのブーイングについてアンケートを実施。結果は『正当』=47%、『過度』=28%、『不十分』=25%となった。

退団時の温かい拍手


マドリディスタからバッシングを受ける事も多かったベイルだが、最後は温かく送り出された。2021/22シーズンのCL優勝セレモニーでは、ベルナベウのマドリディスタはベイルに対して拍手。さらには、ベイルコールも鳴り響き、これに対してベイルは拍手で応えた。

ベイルへの評価は賛否両論あった。しかし、彼は大舞台でゴールを決め、マドリーに多くのタイトルをもたらした。これは紛れもない事実で、レアル・マドリーの歴史にその名を残した。ベイルの功績は今後も語り継がれていくだろう。