上船

相生学院高校サッカー部の上船氏が提言する、日本の育成サッカーにおける課題。前回は、「公式戦で活躍できない理由」をまとめてみました。

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今回のPart2では上船氏が語る育成サッカーの課題2つ目、「練習時間と練習内容」についてです。選手を指導している方や選手のプロを応援している保護者の方も是非一緒に考えてみてください。

一つ一つの練習時間


同じようなトレーニングを10分間行っても選手は飽きてくる。「止めて、蹴る」を目的にしているトレーニングを10分間タンタンとこなすか、
10分を三回に分けて部分部分を、試合を意識しながら集中して取り組むかで、大きく練習の意味が変わってくる。だからこそ、手段の部分を指導者が工夫してあげる必要がある。

世界の選手たちはそのように、小さい頃から練習の細かい部分でも集中できるようなトレーニングを受けてきていると上船氏は語る。

育て方のコンセプトがない


プロになるためには、各ポジションによって求められるスキルや身体能力も異なってくる。その上でプロ、厳密にいえば、どのポジションのプロを目指しているかというゴールをはっきりさせた上で、プロから逆算して選手を指導していくべき。

そうすることで小学生、中学生、高校生とそれぞれ何をしなければいけないのかをはっきりさせて、年代別のトレーニングコンセプトを作る必要がある。

選手はそれぞれ育ってきた環境や、性格、身体的特徴もそれぞれだ。これらのプロフィールを鑑みると選手の適正ポジションが異なってくるのは明らか。

選手全員に対して同じ指導法で、例えば10人に1人がプロになれば、それは「プロを育成した」というより、選手が勝手にプロになったと解釈する方が正しい。その1人が偶然10人に適用していた指導法が型にハマっただけだからだ。

だからこそ指導者は選手のプロフィールを見極めて、一人一人の型に合うような指導をしてあげないといけない。

日本の教育カリキュラムは?


上船氏は日本の教育カリキュラム的にはスペシャルな選手が育てにくい環境にあるという。能力が低い子どもたちを平均まで引き上げるが、スペシャルな選手を育てるためには上の選手をどんどん伸ばし、能力の低い選手たちに付いてこさせることも大事。

土日の練習時間、試合が長い


試合をするのが当たり前になり、一試合、一試合にフォーカスできなくなってしまっている。まず日本の子どもたちは練習で行う試合だったり、練習試合のスコアで、点差を覚えていない。実際に上船監督が生徒たちに今日の試合のスコアについて質問してみると曖昧な返事が返ってきたりする。一方で世界の選手たちはどんな内容であろうと絶対に覚えている。

なぜならその日に行う試合は1試合だけだからだ。日本の練習や練習試合では何回もゲームを繰り返し行っているため、勝ちにこだわらないという悪癖が身についてしまっているケースがよくある。

またプロの試合も週末の土日によく行われるがその試合を現地で見に行く子どもたちが少ないというのも問題だと上船氏は指摘する。というより、土日に練習や試合が被っているために時間がないという方が正しいかもしれない。故にプロになりたいと語る子どもたちが多くても実際に強くそれを思う選手は少ない。

だからこそ、実際にプロの試合を見させてあげることで自分がなりたい姿を具象化させてあげる必要がある。またテレビやOTTサービスでサッカーを見ている選手が少ないというのも課題。結果として、子どもたちが見ているサッカーは同年代や、その人を取り巻く環境のサッカーばかり見てしまっている。

それらのサッカーは決して完璧でもないため、他のサッカー(特にプロ)を知らないとサッカーへの理解力が欠如してしまう。しかし海外の子どもたちは地元のチーム・プロの試合をもっと頻繁に見ており、サッカーの理解力を養っている。

選手がプロになるまでに悪いコンセプトを植えつけない


「あそこのチームはドリブルサッカー、パスサッカー、フィジカルサッカーだ」のようにチームに〇〇サッカーと定義づけしてしまうことがよくある。

小さい頃からコンセプトに拘らせるのではなく、統合的に能力を養い、常にその養った能力をどのようにゴールに結び付けるか、あるいは勝利に結び付けるかを考えられるように意識付けさせないといけない。