仕事

人はなぜ仕事をするのか。その理由は主に次の3つに集約されます。それは、生きていくため、生活を豊かにするため、夢を実現させるためです。

しかし、仕事をしている人に「仕事は楽しいですか?やりがいを感じていますか?」と質問すると、多くの方が「仕事が楽しいわけない」「こんな仕事にやりがいなんて感じない」と答えます。あるいは「仕事は楽しくやりたいけど、どうしていいのかわからない」「どうすれば仕事にやりがいを感じられるのかわからない」と答える方もおられます。

そこで今回は『仕事にやりがいや楽しさを見つける方法』についてお話しします。

『仕事』が意味するもの


はじめに、仕事とは「何かを作り出す、または、成し遂げるための行動。あるいは、生計を立てる手段として従事する事柄」をいいます。

もう少し具体的にいうと、仕事というのは、誰かの困り事や不便、不快を解消して、その見返りとして金銭などを受け取る行為です。

ですので、いくら一所懸命に動いたとしても、前述のような成果を伴わないものは「仕事をした」とは言えませんし、まして仕事をする人が生産者ではなく消費者になってしまっては「仕事をした」ことにはなりません。ここはすごく大事なところなので、しっかりと抑えておいて下さい。

『仕事』『業務』『作業』の違い


また、仕事と同じような意味を持つものとして、業務と作業があります。

業務は、商品の販売や見積書の作成といった会社側から与えられた任務を日常的に継続して行う活動をいい、作業は、商品の陳列や包装といったやり方や手順が決まっていて、誰がやってもある程度同じような結果が得られる活動をいいます。

例えば、お客さんから言われた苦情の原因を探り、その苦情を感謝に変えるための策を考えてそれを実現させるのが『仕事』、苦情対応やホスピタリティに関するマニュアルを作成するのが『業務』、そのマニュアルに則ってお客さんに対応するのが『作業』ということです。また、思考の量や質、自由度や難易度でいうと、「作業 業務 <仕事」となります。

『仕事』の考え方〜3人の”審判人”〜


突然ですが、皆さんは『
3人のレンガ職人』という話を知っていますか?仕事の向き合い方を説いた話なのですが、ここで皆さんにこの話をアレンジした『3人の審判人』という話をしようと思います。

一人目:あるとき、子供が芝生の広場を歩いていると、フットボールの試合の準備をしている審判を見かけました。そこで子供は「これから何をするの?」と訪ねました。するとその審判は「誰もやりたがらないから、お前が審判してこいと監督に言われて来たのさ。審判なんて文句しか言われないから私だってやりたくないけど、監督の命令だから仕方ない。本当についてないよ」とため息をつきながら答えました。

二人目:しばらく歩くと別の審判を見かけました。そこで子供は「これから何をするの?」と訪ねました。するとその審判は「試合を裁きに来たのさ。審判って文句しか言われないけど、選手と違って試合をするとお金がもらえるし、権力使って選手や試合をコントロールできるんだ。そこが魅力さ」と欲まみれの顔で答えました。

三人目:またしばらく歩くと別の審判を見かけました。そこで子供は「これから何をするの?」と訪ねました。するとその審判は「選手や応援する人にこの試合を思いっきり楽しんでもらうために来たのさ。審判て文句ばかり言われて本当に大変だけど、やりようによってたくさんの人を幸せにできるし、感動や興奮を生み出すお手伝いもできるんだ。最高にやりがいのある仕事だよ」と目をキラキラさせながら答えました。


皆さんはこの話を読んで何を感じましたか?おそらく、一人目の審判に対しては「イヤイヤやるなんてふざけるな!選手のために真剣にやれよ!」といった怒りや不満を感じたと思います。

二人目の審判に対しては「は?金のため?自分の欲望を満たすため?そんな気持ち、選手に失礼だろ!」とこちらも怒りや失望を感じたと思います。

では三人目の審判に対してはどうでしょうか。「そんなの当たり前だから特に何も感じない」という方もおられるでしょうが、前の二人と違って喜びや感謝といった嬉しい気持ちになられた方も多いと思います。

この話から見えてくることは2つあります。

①仕事で良い成果をあげるためには何が必要かということ

②仕事に対する向き合い方によって困難はやりがいに変わり、不安や不満は楽しさに変わるということ


もう少し詳しく見ていきます。

成果を上げるために必要なもの


最初の「成果をあげるために必要なもの」に関しては、主に3つあります。

何を実現させるためにそれをやるのかという「目的」が明確になっていること

担当者が目的をしっかり理解したうえで「目的を実現させる行動」をしていること

目的が自分だけではなく「自分 相手」の喜びや満足になっていること


一人目の審判は
全てありませんでした。

二人目の審判ははありましたがはありませんでした。

三人目の審判は全てありました。

ここから言えることは、多くの方が一人目や二人目の審判には不安や不満や不信感を抱くのに対して、三人目の審判には安心や期待や信頼感をもつということと、3人の中で最も望ましい成果をあげるのは三人目の審判ということに異議を唱える人はいないということです。

仕事に対する向き合い方


次の「仕事に対する向き合い方」に関してですが、確かに審判は誰からも褒められませんし応援する人もいません。何かあるとすぐ叩かれたり負けた原因にされたりと、とても難しく厳しい任務です。

ですので、審判を積極的にやろうと思う人はあまりいませんし、やりがいを感じたり喜びや楽しさを見出しにくいのは事実です。

ですが、どんなに楽しいことでもイヤイヤ取り組むとそれを楽しむことはできませんし、自分の喜びしか考えない人が作り出す空間が、みんなが楽しめる空間になることはありません。

そうではなく、人を喜ばせたい、楽しませたいと思いながら汗を流せる人は周りからも力を貸してもらえますし、たくさんの人を笑顔にできます。ポイントは、仕事の嫌な面だけに目を向けるのか、楽しさを見つけようとしているのか、楽しもうとしているのかです。意識ひとつで、向き合い方ひとつで、仕事は楽しむことも、苦しむことも、誇りを持つこともできます。

最後に


いかがでしたか。仕事とは働くということですが、「はたらく」とは傍(はた)を楽(らく)にさせるということです。楽とは、人を楽にさせる以外に「楽しませる」という意味もあります。

自分の仕事が傍(社会や他人)に楽を与えているのか。仕事をするときは傍を意識して、自分がどんな価値を創造してその価値を傍に提供できているのか考えながら行動することが大事です。そして傍を楽しませ続けることができれば、仕事のやりがいや楽しさはもっともっとあなたのものになるでしょう。


家本政明

家本政明氏

1973年広島県福山市生まれ。96年に1級審判を全国最年少で取得。2002年からJ2、04年からJ1で主審を担当。05年からプロ審判となり、国際審判にも選出。10年に日本人初の英国ウェンブリー・スタジアムで試合を担当。11年に英国初の外国籍審判としてFAカップの試合を担当。21年に勇退。国際試合100試合以上、Jリーグは歴代最多516試合の主審を担当。現在はJリーグフットボール企画戦略部マネージャーとして活動中。同志社大学経済学部卒、グロービス経営大学院卒