マルク・コルテス

スポーツ企業、特に小売業の大手多国籍企業は、経営戦略を180度転換させた。製品やチャネルは二の次となり、顧客体験が最優先事項に取って代わるだろう。その際に重要な役割を果たすのが、ビッグデータとデジタル化だ。

以下はデジタルビジネスの発展に関する専門家であるマルク・コルテス氏の今後の小売業とNFTの関係における見解だ。

Q 多くの企業は、デジタル化を変革の過程ではなく、ゴールとして捉えているのか?


A 企業によってはデジタル化を課題とした背景で創立されているので既にデジタル時代の基盤というものを備えている。従ってそういった会社は順応が早い。一方で創立されてから長い年月が経っている会社は徐々に変わってきているとは言え、まだ変えるべきことをたくさん抱えている。その中で変化しない企業は衰退していく。

Q カメレオンのような消費者の意思決定を、ビッグデータはどのように予測できるのだろうか?


A この場合、予測不可能な消費者と習慣的な消費ニーズが混同されているのだろう。結局、ユーザーの購買パターンは同じではないが、市場の大手は「どの製品が欲しいか」ではなく、「いつ買いたいか」など、一連のパターンを把握しているのだ。。つまり顧客の考えを予測していつ商品を提供するかを図っている。

Q ナイキはデジタル製品の制作を専門とするRtfkt社を買収し、アディダスもメタバースの世界に参入してきている。 これらの各社の動きの目的は何だろうか?


A まず第一にこれらの大企業は、取り残されないように、チャンスを逃さないようにと考えている。メタバースやバーチャルワールドが提供するロジックは、これまで我々が経験してきたものとは異なり、ビデオゲームの領域を自然に進化させる、非常に高いポテンシャルを秘めている。

一方、小売大手は、視聴者や顧客の近くにいて、つながる方法を見出したいと考えている。これらの企業のターゲット顧客の多くは、こういった多くの企業が探ろうとしている環境で暮らしている。結局のところ、メタバースやバーチャルワールドの分野に参入することで、顧客をより深く知り、「商品を売る」ではなく「体験を売る」という論理を身につけることができる。

Q 小売業がNFTを商品化する際のビジネスポテンシャルは?


A この分野に関しては、まだ開拓が始まったばかりだ。はっきりしているのは、NFTの世界につながるものはすべて、独占市場ではない非介入型の環境につながるということ。つまり第三者を介さずとも製品を確保できること。そして次のステップとして商品化に目を向ける必要があるが、デジタル商品に関しては企業が販売する物理的な製品とはあまり関係がないように思われる。

Q デジタルのモノは需要を生み出せるのか。 開拓すべき領域はメタバースに限定されているのか? それとも、現実世界にまだ画期的なものが隠されているのか?


A さまざまな分野で、まだ多くの課題があると思う。結局のところ、物理的な世界であろうとデジタルな世界であろうと関係ない。本当に大切なのは、ユーザーに提供できる体験をどれだけ発見できるかということ。メタバース、ARメガネなどこれらは、一般の人にプラスを与えるためのツール。成功するかどうかは、その体験をユーザーがどう受け止めるかにかかってくる。