UEFA

スポーツは多くのビジネスの中枢的な役割を担う一方で、一部の国の行為に対応する際には、メディアの要素として影響力を放つこともある。そして、まさに昨日、ロシアがウクライナに侵攻して武力衝突が始まった際にこのことが起きた。

チャンピオンズリーグの決勝戦がサンクトペテルブルクから変更されること、シャルケ04がガスプロム社との関係を断ち始めたこと、FCバルセロナがユーロリーグの2試合のためにロシアに渡航することを拒否したことなど、各機関の反応は迅速なものだった。

両国とEUとの貿易関係で、スポーツ用品だけで3億4千万ユーロ(約438億3300万円)以上の損失。ガスプロム社や1XBET社といったスポンサーシップや放映権の販売などを考慮すれば7億ユーロ(約902億4500万円)以上にもなる。

NATOやEUによる経済制裁や封鎖が即座に発表され、スポーツの小売業界はその行方を注視している。ロシアは、毎年2億100万ユーロ(約257億9700万円)相当のスポーツ関連製品をユーラシア大陸の他の地域に輸出しているがこの戦争を受けてどうなるか懸念されている。一方でウクライナがヨーロッパ諸国に輸出している5400万ユーロ(約69億6200万円)相当の製品も動かずの状態にある。

UEFAは声明の中で、「我々はこの状況を最大限の深刻さと緊急性をもって扱っている」と述べ、「ヨーロッパの安全保障状況の発展に対する国際社会の大きな懸念を共有し、ウクライナで進行中のロシアの軍事侵攻を強く非難する」と述べている。

勿論、UEFAとロシアの関係を語るならガスプロム社が出てくるだろう。 この世界最大級のガス生産会社は、UEFAに年間4,000万ユーロ(約51万5700万円)を拠出している。今年のチャンピオンズリーグ決勝戦の会場にサンクトペテルブルクが選ばれたことを考えると、いかにこの会社がUEFAに影響を与えているか分かる。これは、プーチンがFIFAと協力して、2018年のワールドカップの開催を確実にしたのと同じ手法だ。しかしながら、今後UEFAが下す決定によってこのスポンサーシップ関係に大きな影響を与える可能性がある。

各機関、各クラブの対応はどうなるのか


バルセロナは前述した通り、ロシアーウクライナ間で深刻な状況が発生していることを考慮して、ロシアに渡航しないことにした。当初は日程の変更は一切しないことを決めていたヨーロッパリーグだが、現在の状況を受けて日程を調整すしようとしている。一方でバルセロナは、年間800万ユーロ(約10億3100万円)以上を搬出している、ロシアのオンラインカジノを手掛ける「1XBET」に対して何らかのアクションを起こすかどうかは、まだ分からない。

ヨーロッパリーグにおけるロシアの影響力という点では、ヨーロッパリーグではロシアの金融会社VTBがオフィシャルスポンサーであり、ロシアの大富豪アレクセイ・フェドリツェフが所有するフェドコムは、ELの決勝トーナメントに勝ち進んでいるASモナコのオフィシャルパートナー兼メインスポンサーであるということだろう。この二つの機関、チームは、ガスプロム社をメインスポンサーとするブンデスリーガのシャルケ04と同じような状況に立たされている。シャルケについてはこちら(シャルケ04、ユニフォームからロシアのスポンサーを削除)

スポーツ業界におけるロシアの影響力


ロシアのスポーツ産業に関する調査によると、現在ロシアには、メーカーや販売業者から大会主催者、クラブ、ジムまで、15万を超える組織がある。この報告書によると、スポーツ用品やサービス分野は年間約70億ドル(61億8,000万ユーロ)の規模があるという。

しかしロシアにとって大きな問題となってくるのは、ロシアに対する貿易制裁が発動される可能性が高いということ。現在ロシアの貿易収支は非常に良好であるが、これらの措置はスポーツ関連製品の輸出に大きな影響を与えることになる。過去のスポーツ用品分野の収支を見てみると、2020年のEU圏内へのスポーツ用品輸出額は2億150万ユーロ(約259億7800万円)、これに対して輸入額は2390万ユーロ(約30億8100万円)と大幅に輸出額が輸入額を上回っていることがわかる。

そんな中で今週木曜日に始まった戦争によってチャンピオンズリーグ決勝やガスプロム社、ノルドストリーム2社などの企業のスポンサーシップなどの将来の行方が不透明になっている。さらに、プーチンが2036年のオリンピック大会にロシアが立候補すると発表していたが、その可能性はますます遠のいているように見える。