ハビエル・マルティネス

今回は、スペイン人のハビエル・マルティネスさんにインタビューをさせていただいた。同氏はBoostUpという企業で現役プロサッカー選手のサポートを行っている。

栄養管理からフィジカルトレーニング、ビデオ分析など範囲は幅広い。

かつては自身も、コケやモラタなど現スペイン代表選手たちと代表のアンダーカテゴリーで共にプレーしていたが、怪我により選手としてのキャリアをあきらめざるを得なくなった。

現在はプレミアリーグやラ・リーガなどで活躍する各国の代表選手たちのサポート役に回っている。果たしてサッカー選手のサポートとはどのような仕事なのだろうか。

1. あなたのサッカー歴と共に自己紹介をお願いします。

人生のほとんどをサッカーに費やしています。5歳からサッカーを始め、最初は自分の町(マドリードのポスエロ・デ・アラコン)のチームでプレーしていました。

その後アトレティコ・マドリードU10、ラージョ・バジェカーノU11・U12に所属し、最終的にヘタフェでU18までプレーしてきました。この間マドリード代表にも選ばれ、コケ、パブロ・サラビア、カルバハル、モラタなどカタールワールドカップを戦った選手たちとチームメイトになることができました。

僕は当時、膝の怪我を抱えたことにより、ヘタフェBから4部リーグ相当のチームへ移籍しましたが、再び膝を負傷したことにより選手としてのキャリアが遠ざかっていきました。

プロサッカー選手になるという夢は諦めざるを得なくなりましたが、やはりサッカーは自分の好きなことなので、この世界に関わり続けたいと考えました。そして、さまざまな資格を取得し、コーチとしてのトレーニングを開始しました。

現在、私はUEFAプロ資格に相当するレベル3のコーチング資格を持っており、世界のどのクラブでもコーチングができるようになっています。地元のチームの下部カテゴリーで数年間指導を始め、その後、バルセロナにあるマルセト・フットボールというハイパフォーマンスアカデミーで働く機会を得ました。

私は、メキシコにアカデミーの支部を開くことになり、1年半ほど滞在しました。監督だけでなく、テクニカルディレクターも兼任していたのは、とてもいい経験でしたね。

その後現在所属しているBoostUpを知り、働き始めることになったのです。

2. BoostUpとは何ですか?

BoostUpは、サッカーの世界に関わるすべてのお客様に対して、彼らのニーズを満たすためのサービスを提供するコンサルタント会社です。お客様は、サッカークラブ(プロ、セミプロ、アマチュア、アカデミー)、代理人、選手(プロ、セミプロ、アマチュア)です。

各分野でプランは異なりますが、常にパーソナライズされたもので、まずお客様の目的を知り、求められているものを一緒に作り上げていきます。

例えば、スペインのセミプロチーム、RFEF2部(4部相当)、RFEF3部(5部相当)のカテゴリーで、栄養・フィジカルトレーニングの準備に協力したことがあります。また、スペイン以外のチーム、さらにはサッカー連盟とも協力し、分析部門を支援しています。

しかし、現在は代理店や個々のプロ選手との連携に重点を置いており、現在、数名のサッカー選手と栄養管理、フィジカルトレーニング、ビデオ分析について連携しているところです。

3. どの選手と働いているのですか?

今、私たちはヨーロッパの主要リーグで活躍する選手たちと一緒に仕事をしています。

スペイン1部リーグからはフランコ・セルビ(セルタ・デ・ビーゴ)、エセキエル・ポンセ(エルチェ)、イングランドリーグではジェリー・ミナ(エヴァートン)、ルイス・シニステラ(リーズ)、マルコス・セネシ(ボーンマス)、オスカル・エストゥピニャン(ハル・シティ)、イタリアリーグのセリエAではジョン・ルクミ(ボローニャ)と始めたばかりの若い子(名前は言えません)などがいるんです。

5大リーグ以外では、スイスリーグでプレーするアルナウ・コマス(バーゼル)とも連携しています。ヨーロッパの重要なリーグでプレーする選手たちと仕事をし、彼らが私たちの仕事を信頼してくれていることは、私たちの誇りであり、嬉しいことです。

他には、マルク・カサド(バルサB)は、フベニルA(U-18)時代から一緒に仕事をしてきましたが、今ではバルサBのキャプテンの一人として重要な役割を担い、シャビ監督率いるトップチームでも何試合かプレーしています。

3.1 以前はユースサッカーに携わっていたそうですが、今はプロサッカーに関わっています。大きな違いがあるのではないですか?

特に有名ではない選手と仕事をしていたところから、それなりに知名度のある選手を担当することになったという意味では、大きな違いがあります。

しかし、結局のところ、選手はユースでもプロサッカーでも同じで、謙虚で勤勉な人たちであり、有益なアドバイスにはほとんどの場合耳を傾ける傾向にあります。違いはあるともないとも言えます。

4. 選手にとっての栄養の重要性とは?クラブが全選手に提供する栄養管理と特定の選手に特化した栄養管理は異なるのですか?

今となってはとても重要なことです。今のサッカーはすべてが研究され、その差はどんどん小さくなっています。栄養はすべてのエネルギーのベースとなります。

例えば、食事に細心の注意を払い、以前では考えられなかった年齢まで選手生命を伸ばしているクリスティアーノ・ロナウドや大ベテランとしてワールドカップ王者となったリオネル・メッシなどは、いつも「才能」があると言われますが、彼は食事にも細心の注意を払い、休養にも気を配っているのです。

サッカーはフィジカルが強くなってきていますが、良い食事をすることで、120分まで耐えることができます。

我々が担当しているプロ選手には、クラブが選手に提供する栄養を補完する栄養プランを提供しています。選手のタイプ、ポジションなどに応じて、可能な限り栄養を調整するようにしているのです。映像解析と連動させることもあります。

例えば、ある選手が70分になるとパフォーマンスが落ちる傾向があると、炭水化物を与えたりします。

もちろん、チームでの練習量や休養の度合い、家庭環境なども考慮します。例えば、子どもが生まれたばかりで、各トレーニングの後に自宅で子どもの世話をしなければならない、子どもが泣いて夜もよく眠れない…そういった状況にも対応し、選手に最適な栄養を提供できるようにします。

選手と密接に連携し、時にはクラブ専属の栄養士と連携することもあります。私たちがやっていることをお互いに共有するのです。最終的な私たちの共通の目標は、その選手がピッチで活躍し、パフォーマンスを向上させることです。

他にも、奥さんの誕生日で食事に行くという程度でも、日常的に選手は栄養士とコミュニケーションをとります。「この料理を頼んだらデザートは食べられない」と伝えることなどですね。これは、選手一人ひとりに対して、日々、非常にきめ細かいフォローをしていることを示す一例です。

先ほども言いましたが、私たちは選手一人一人に100%合わせています。そして、どんなに良い栄養計画を立てても、継続性がなければ意味がありません。プレーヤーはそれぞれ違う国の出身で、食文化も違うし、それぞれの食べ物の好みも違う。

日本人の選手に白米を完全に抜きなさいというのは無理ですし、スペイン人の選手にパンを食べるなというのも無理な話です。長期的な継続性を持たせるためには、それぞれの選手に応じたプランを用意する必要があり、そこから違いが見えてくるのです。

5. ポジションや選手のタイプに応じたフィジカルトレーニングも行っているようですが、選手との練習はどのように行っているのですか? 選手への日々のフォローはどのように行っていますか? また、他のタイプのトレーニングや負荷を提供することで、クラブとトラブルになったことはありますか?

フィジカルトレーニングに関しては、栄養管理と似ていますが、よりパーソナライズされたプラン提供しています。ストライカー、ミッドフィルダー、ディフェンダー…それぞれの負荷や繰り返さなければならない最大強度の動作も、それぞれのポジションで異なります。

選手のポジションによって、異なるトレーニングセッションを作り、異なる目標を設定します。また、選手から提案があることもあります。センターバックの選手が、もっとボールを奪えるようにジャンプ力を上げたいと言えば、フィジカルトレーナーと検討し、その目的に向けたトレーニングを用意します。

ビデオ分析もまた有効で、もしその選手が空中戦にあまり勝てないことに気づけば、それはジャンプ力が足りないからだとわかります。

目標を設定したら、選手がクラブでどのような身体的負荷をかけているか、どのようなトレーニングを行っているかを知り、選手のトレーニングを補完する一連のトレーニングセッションをプログラムするために、日々選手と向き合います。

例えば、その選手が2部練習を行った日であれば、たとえそのようにプログラムされていたとしても、3回目のストレングス・セッションを行うよう指示することはありません。

クラブはすでに、栄養面でも身体面でもいろいろな工夫をしていますが、選手一人ひとりにこれほど具体的で個別なフォローはできないでしょう。そこで、私たちはプラスアルファのサービスを提供します。

栄養管理の部分でも触れましたが、身体的な準備に関しては、完全に選手に合わせます。どのようなトレーニングを企画するかは常に考慮しなければなりません。

選手があるトレーニングを嫌がれば、結局はやらないことになりますから。ゴールにたどり着くにはさまざまな方法があると思いますので、柔軟に、それぞれのプレーヤーに最適な方法を探していくことが大切です。

6. 選手の分析に関してはどのようなものなのでしょうか?

個別には、技術的・戦術的なプランを提案するのですが、選手からの人気も高く、需要の高いサービスです。我々は2種類のレポートをご用意しています。

1つ目は試合前の報告で、対戦するチームの特定の選手に関する追加情報を提供することです。あなたがセンターバックであれば、対戦する相手ストライカーについて、長所や普段どんな動きをするのか、弱点は何かといった情報を提供します。

そしてこれらの情報だけでなく、彼らに勝つためにどのようなリソースがあるのかもお伝えしています。事前に知っておくことで、自分の動きを考えずに済み、ピッチ上で大きな違いを生む1秒を稼ぐことができます。

ビデオ分析を行う際、事前に選手を研究しているとはいえ、その選手がピッチ上でどのように考えているのか、どんなサッカー選手なのか、選手の口から直接聞きたいと考えています。そして、所属クラブの監督がどのような戦略で、どのような試合をしたいのか、常に選手とコミュニケーションをとっています。

私たちは常に、選手が所属するクラブの中でプレーできるように心がけていますので、チームの戦略を損なうような動きを選手にアドバイスすることはありません。ビデオ分析に基づき、プレーヤーの判断がより良くなるように常に心がけています。

試合前だけでなく、試合後にも報告を行います。試合終了数日後にその選手とビデオ会議を行い(その選手のポジションに応じた目標を事前に設定)、デュエル、ディフェンス時のポジショニング、マーク、横からのクロスなど、その選手の目標に関係する部分を分析して改善します。

後編へ続く…