フランスリーグ1 リール

欧州のビッグクラブは、コロナウイルスの影響で合計13億200万ユーロ(約1676億2800万円)の損失を出したが、全てのクラブが同じような被害を受けたわけではない。

KPMG Football Benchmark(以後KPMG)のデータによると、フランスリーグ1の前年王者リールは、コロナの影響を受けた過去2シーズンで平均39.8%ビジネスを改善した。一方、セリエAのASローマは同期間中に29%の収益を失ったという。

20-21シーズンのリールは、パリサンジェルマンやリヨン、マルセイユといった強豪クラブを抑えての優勝を果たし、また、主力選手の売却もうまくいった。売却に関して、移籍市場が停滞している中での出来事でありながらも、平均売却額は8980万ユーロ(約115億6200万円)だった。

リールに次いで安定した経営を見せたのは、ラ・リーガのセビージャで、15.4%のビジネス改善により1億5910万ユーロ(約204億8400万円)を獲得した。

また、KPMGは、UEFA主催の大会(CLやEL)で安定した成績を残しているセビージャ以外にも、この2年間での営業収入の平均が6億6100万ユーロ(約851億円)と好調なレアル・マドリードについても触れている。

しかし、これら以外の主なクラブは収入が減少しており、マンチェスターC(-2.3%)、バイエルン・ミュンヘン(-3.7%)、アトレティコ・マドリード(-4.7%)、ユベントス(-9.7%)といった下落率10%未満のクラブから、FCバルセロナ(-22.9%)、マンチェスターU(-20.1%)、アヤックス(-28%)のような20%以上の下落率を誇るクラブも存在する。


コロナウイルスが流行する前、ヨーロッパ上位20クラブ(8リーグの王者+過去2シーズンでの収入ランキングトップ12クラブ)の総収入は、75億8600万ユーロ(約9766億6900万円)で、そのうちバルセロナは8億3900万(約1080億1800万円)と最も高い数字であった。

ただ、2020年3月以降、この数字は減少し続け、最新の数字は12%減の66億9200万ユーロ(約8615億7000万円)となっている。

一方、トルコのベシクタシュは、先ほどの20チームの中で最も収入が減少した。同クラブの収入は平均32%減の6660万ユーロ(約85億7400万円)となった。

節約を迫られる各クラブ

アヤックス

パンデミックの影響で、クラブによっては節約を強いられる場面も出てくる。しかし、KPMGによると、選手の給与を含む人件費は、ビッグクラブが必要とするほどには調節できていないという。

平均46億1300万ユーロ(約5939億円)で比較的安定しており、18-19年と比較して1%しか減少していない。「このレベルの選手契約が保証され、複数年契約が主流であることを考えると、これらのコストを突然削減しようとすることはできない」。

コロナウイルスの影響を受けたシーズンでは、「支出増の収入減」という状況になってしまったため、選手のコスト・インカム・レシオ(経費率)は67%から74%と、平均で7ポイント上昇した。

この点で、最も影響を受けたのは、「セリエA優勝を目指して選手に投資を続けた」インテル。ただ実際に優勝しているため、良い投資だったと言えるだろう。また、アヤックスも、チャンピオンズリーグで準決勝に進出した18-19年に比べ、苦戦を強いられた。

最後に、先ほどの20チームの純損益について、18-19年は合計で2億2700万ユーロ(約292億2500万円)の損失だったが、その後の2シーズンで平均15億2900万ユーロ(約1968億5300万円)の損失を出したことをKPMGは強調している。平均すると、1クラブあたり平均6500万ユーロ(約83億6850万円)の赤字となる。

KPMGは、「スタジアムの入場制限がなくなっていくとはいえ、オミクロン株の影響もあり、21-22年の全体的な業績はほぼ間違いなく18-19年を下回るでしょう」と見ている。