メタバースは、各ブランドはデジタル資産(NFT)の販売からアフターケアなどのサービスの提供まで幅広く対応することができるとして近年注目を集める分野。マンチェスター・シティやアディダス、ナイキは、新しいデジタルリアリティ専門マネージャーまで雇用している。

メタバースとは?

メタバース

World of WarcraftやMinecraft、The Simsを進化させたメタバースとは、ユーザーが様々な活動を行うことができる仮想空間のことで、スポーツ界にとって新たなチャンスである。現状スポーツでミレニアル世代やZ世代からお金を取るのは非常に困難であるが、メタバースによって新たなマネタイズが可能になる。

簡単な例を出すと、「フォートナイト」のようなビデオゲームや遠隔会議のプラットフォーム、ユーザー自身が土地を購入し、家を建て、買い物をすることができる仮想世界など、あらゆるものがこのコンセプトに含まれる。

スポーツブランドの可能性は、自チーム製品の販売(NFT)から、ショップの開設、コンペティションの実施、顧客サービスなど多岐にわたる。

例えば、「東京に住むユーザーが、バルセロナに住むユーザーとメタバース上で仮想競技を観戦しながらお酒を飲む」といった具合に、メタバースでは地理的な障壁がなくなり、友人と一緒にゲームを楽しむことができるようになる。

スポーツにおけるメタバースの活用

マンチェスターシティ

スポーツ面においては、スター選手と写真を撮ったり、リアルタイムでチャットしたり、バーチャルバーに行って他のファンと話したりできる。競技中は試合全体のパノラマビューや任意の視点にズームインしたり、ユーザーはバーチャルピッチに入って選手と一緒に走ることもできるため、数多くのマネタイズが可能になるのだ。

最近では、マンチェスター・シティなどのクラブが、独自のサッカー・メタバースの構築を発表している。同クラブはメタバースを使って、エティハド・スタジアムのレプリカを持ち、スポーツ・エンターテインメント・ビジネスを盛り上げていくという。

同じサッカーでは、Virtway社がカンプノウを再現してメタバースで仮想イベントを開催し、Shirtum社はトップ選手やクラブをNFTやメタバース空間に導入する取り組みを行っている。

ナイキは2021年9月、2015年から働いている同社のテクノロジー部門にメタバース担当のエリック・レドモンを置いた。同氏はRobloxプラットフォーム上のブランドスペース「Nikeland」などのプロジェクトを主導している。また、ナイキは、デジタル資産の商標登録をいち早く申請した企業の一つだ。

同じスポーツブランドであるアディダスもナイキに遅れをとっていない。昨年11月にメタバース「The Sandbox」の土地を購入し、現在はNFTブランドのBored Ape Yacht Club、デジタルコミックシリーズのPunks Comic、暗号通貨企業のGmoneyと新しいプロジェクトを開発している。

スポーツメタバースの実例

例えば、ファンがデジタル上で参加できる仮想サッカースタジアムの実現、消費者アバターに商品を販売したり現実世界で購入できる仮想ショップの実現、仮想世界内にチームやリーグのデジタルオフィスを実装することによるインフラコストの削減などが可能になる。

スポーツファンとのエンゲージメントを向上させるためのトークンの作成、さらにはプレーヤーの活動を利用したNFTの作成、独自の暗号通貨の導入なども含まれる。

メタバースを活用してスポーツブランドとスポーツファンの間に新たな種類のコミュニティを作るには、技術、想像力、5Gの導入が必要となる。

世界のバーチャルグッズ市場は2025年には2000億ドル(約22兆8200億円)近くになると予想されており、Dapper Labs社のNBA Top Shotがすでに100万人以上のユーザーを持っていたり、デジタルアーティストと提携するRtfktStudios社が約7分間で310万ドル(約3億5400万円)相当のトレーナーNFTを販売したりするなど、数多くの事例がある。

ゲームにおけるメタバースの活用

ゲームでは、ユーザーがアイテムを購入してアバターをカスタマイズしたり、ゲームにオプションを追加したりすることができる。例えばアバターにレアルマドリードのユニフォームスキンを着せたとする。同じスキンにアクセスできる他のプレイヤーは、あなたがいくらで購入したかを知っているため、憧れを抱く要素にもなるのだ。

これまで、ほとんどのゲームでは、スキンは技術的にプレーヤーの所有物ではなく、ユーザーはお金を払って使用できるようになっただけで、所有権はなかった。

しかしブロックチェーン技術の導入により、デジタル資産(NFT)をあたかも現物のように売買することが可能になった。例えばバーチャルTシャツのオーナーは、映画館や会社に行くために街中で着るのと同じように、どんなプラットフォームでも自分のアバターに着せるために使うことができ、それを販売することもできる。

NFTの2大メタバース

すでにNFTの交換を可能にしている2大メタバースは、イーサリアムのブロックチェーンを基盤とするDecentralandとThe Sandboxである。

Decentralandでは、交換可能なトークンやアセットとして、Mana(プラットフォームの暗号通貨)、Wear(身につけるものなどを含む)とLand(仮想の土地)の3種類が存在する。このプラットフォームには20以上の投資ファンドが出資しており、サムスン、アタリ、韓国政府などのグループとパートナーシップを結んでいる。

The Sandboxでは、Sand(プラットフォームの通貨)、Assets(ユーザーが作成したコンテンツ)、Games(ユーザーが作成したゲーム)、Land(仮想の土地)の4種類のトークンが存在する。また、165以上のブランド(アディダスなど)と提携し、ソフトバンクが9300万ドル(約106億1200万円)のラウンドをリードしている。