ファントークン

ChilizとSocios.comのグローバルディレクターであるジェームス・ニューマン氏は、ファン・トークンの価値は、取引資産としてのステータスよりもむしろ「有用性」によってますます左右されると英国ニュースサイト『SportBusiness』紙に語っている。

ニューマン氏は現在、親会社であるChilizとSocios.comのグローバルなステークホルダーとの関わりと渉外を担当し、主にヨーロッパと米国、そして「大きく成長する市場」であるブラジルに焦点を当てている。

同事業は、創業者兼CEOのアレックス・ドレイファス氏が提示したファントークンの「ゲーミフィケーション」とファンエンゲージメントを組み合わせたモデルによって、2018年の立ち上げ以来急成長している。

ビジネスモデルと市場の不安定さ


このビジネスモデルでは、chilizが権利者に最低保証料(スポンサー料、あるいはライセンス費用)を支払うことで、クラブやフランチャイズの知的財産に関連するファン・トークンを提供できるようになる。

最低保証額を超えると、同社はファン・トークン販売による収益を権利者と50:50で分け合うのが一般的(レベニューシェア)で、ファンがトークンを取引する際に発生する手数料の半分(現在は0.6%)も権利者(サッカーでいうクラブ)が回収する。手数料は通常、クラブパートナーに支払われる金額の約20%を占めている。

このファン・トークンの提案だが、UEFA、バルセロナ、マンチェスター・シティ、パリ・サンジェルマン、インテルなど、世界中の50以上のサッカークラブや組織、モータースポーツ、eSports、総合格闘技などのスポーツブランドによって受け入れられている。

このモデルに対しては、システムが投機家による操作を受ける可能性があり、クラブの決定に対する投票などの分野におけるファンの関与を収益化すべきではないという批判もある。

トルコのブロックチェーンプロバイダーBitciが関与するスポーツ団体とのファントークン契約の中には、トルコ政府が課す暗号通貨規制の強化により現在圧力を受けているものや、NFTスポーツ取引プラットフォームSportemon Goなどのブロックチェーン関連ビジネスが完全に取引を停止するなど、暗号通貨分野の不安定さも懸念材料となっている。

このことに対してニューマン氏は、「信頼と消費者保護を構築するために、この分野におけるステークホルダーと標準化団体を設立することを目指しており、もっと広い意味で話すと、ブロックチェーン環境の規制強化が望まれる」と語っている。

ファントークン市場におけるその他の懸念点


ニューマンはファントークン市場における懸念点や役割についても以下のように語っている。

「現行のSocios.comと権利保有者の間の契約がいずれ切れるとなると、ファン・トークンの価値が減少すると予想されている問題について、ブロックチェーン上にあるため、資産自体は失効はしない。ライセンサーとの契約に書かれているのは、パートナーや私たちが、契約終了後に何らかの用途を提供できるよう、保証することを約束しているということ。

またスポーツ組織と忠誠心の高いファンとの関係からは”よほどのことがない限り売り払われない”トークンも一定数あり、収益化できる。これにより、Socios.comはクラブが地理に依存せず、双方向のつながりを確立できるデジタル・エンゲージメント・コミュニティを構築でき、重要な機能を果たすことが可能となっている。

さらに”サッカーファン”だけでなく複数のスポーツが好きな”スポーツファン”にとっても非常に有効的だ。F1やテニス、また今後はラグビーも展開していく予定で、米国ではNBAやNFLなども手掛けており、1つのプラットフォーム内で様々なスポーツ団体にエンゲージすることができる。