イングランド

なぜ、優れたリーダーは説得の達人なのか。


全てのイングランド人に沸き起こった祖国愛は、イングランドサッカー代表の監督の働きぶりを「行動学」の専門家が興味を抱いた。専門家はガレス・サウスゲート監督を参考にし、Brexit以降のリーダーで唯一、国民全体とサッカーチームとを一体的に結びつけることに成功している人物と評価した。

Euro2020(2021年)でのイングランド代表の快挙にイングランドの多くの人々が大喜びする中、イングランド代表の変革のリーダー的存在のガレス・サウスゲート監督は喜びを表現することはなかった。

イングランドは、プレミアリーグをサッカー界ナンバーワンのリーグとして世界に売り出しただけでなく、代表チームにおいても監督と選手の双方が、公平、団結、差別などの問題について、チームの影響力を通じファンに意識改革や学ぶ意欲を起こせる、強い団結を呼び起こせるメッセージを持っている。

ナンシー・グローブスはイギリスのニュースサイト「ハフポストUK」ライフディレクターで、健康、メンタルヘルス、福祉、女性、エコライフ、家族関係、人間関係、お金、仕事などを取り上げている。

彼女は、ガレス・サウスゲートのマネジメントと、スポーツが生み出す事象を感情的な原動力として、あるいは社会を動かす事例として、リーダーの説得力を説明する11の行動学的教訓を関連づけた。

失敗をマネジメントする方法を学ぶ


ユーロ2021のグループステージでスコットランドと引き分けたイングランドは、苦い思いを残した。

そして、2017年にスコットランドと2-2で引き分けたという前例もあり、サウスゲートのイングランド代表を率いる能力への疑問が煽られたのである。

サウスゲイト監督は当時、次のような声明を出した。「我々の挑戦は、どうすれば世界最高のチームになれるかだ。私たちを取り巻く問題は、主にメンタリティーによるもの、つまり不利な出来事に耐える能力によるもの。

駆け出しの戦略家が、出来事の解釈を通じて失敗を管理する方法を周囲に知らしめるプロセスの最中にいたのである、つまり「失敗を学ぶことは、成功することを学ぶことである」

困難への対処を学ぶ


2018年のワールドカップに先立って、イギリスサッカー連盟は、一年に数回しか会わない代表チームの一体感を促すために、元バスケットボール代表のスポーツ心理学者ピッパ・グランジを採用した。

彼女の仕事は、コミュニケーションに焦点を当てたもの。その仕事の一つの方法は、プレイヤーに少人数のグループを組ませ、選手たちの人生経験や不安を共有させ、一人一人の性格や原動力について明らかにさせることだった。

それは、従来のやり方より効果の高いアプローチだった。 ライフ・ディレクターのグローブス氏は次のように述べている「もちろん、仕事上の境界線を守ることは重要ですが、自分の恐れや野心をほんの少し共有することで、人生のあらゆる場面で自分らしさを発揮することができるかもしれない」

「自分たちの物語」をマネジメントする術を学ぶ


「我々は選手たちに自分たちの物語を書くようにと話してきた」と、イングランドがあの2018年FIFAワールドカップのベスト16のPK戦でコロンビアを下した後、
サウスゲートは明らかにした。

さらにサウスゲート監督は次の言葉も残している。「今夜、彼ら(選手たち)はチームのこれまでの歴史にとらわれる必要がないことを示した」

サウスゲート監督にとって、「自分の物語を書く」ということは、単なる思いつきではない。実際に日記を書くなどして、どんな物語にしたいのかを具体的に書き出すことで、監督自身もゲームプランを練ることができるだろう。

他人の成功を前にして、褒め方を管理する方法を学ぶ


成功した人を称え、次は自分がそうなる可能性はあることを意識する


今のイングランド代表の選手たちは、褒めるべきチームメイトを褒めるのが上手だ。試合後のインタビューを見ても、彼らは必ずチームメイトを褒めていることにお気づきだっただろうか。

それはウソの行動ではなく、ポジティブな雰囲気を作り出すための手段なのだ。これだけタレントが揃ったチームでは、実際に試合に出る出ないにかかわらず、全員が当事者意識を持つことができる。

人を励ますことは、自分が挫折したときのいい解決策にもなる。目標を達成した人を祝福し、次は自分がそうなる可能性があることを意識する。

SNS上でのメンタルヘルスの管理方法を学ぶ


エリートアスリートでなくとも、心のケアは体のケアと同じくらい重要だ。

イングランド代表では、スマホは禁止されていない。試合後、選手が帰りのバスに乗るやいなや投稿する、彼らのツイートやインスタグラムを見ていただきたい。サッカー選手も私たち一般の人間となんら変わらない。

「選手たちがイングランド代表に参加する間、我々コーチングスタッフが彼らはいつ、どのようにアカウントを使用するかについて、決して規則を作らない。

私は彼らを信頼しているし、彼らは自分自身で決断し、精神衛生上も正しいことを行い、より良い社会を目指すために力を発揮し続けられるほど大人だと把握している」と、サウスゲイト監督は選手のソーシャルメディア上の行動について述べた。

エリートアスリートでなくとも、心のケアは身体のケアと同じくらい重要だ。

憎しみに満ちた人々の前では、沈黙を守る。 “彼らは勝者ではない”


スターリングは、プレミアリーグのマンチェスター・シティで多くの実績を残している若い選手だが、一方で一部のファンやメディアによる耐えがたい過激な人種差別的な扱いや 報道に悩まされていたのも事実。

しかしスターリングは、”なぜ、誰かを罵るような会話でタグを貼るのか? なぜ、肌の色のような馬鹿げたことで誰かを侮辱することをするのか? という正しい問いをコーチに残した。そのように間違ったベクトルで批判する人々に訴えた。

またサウスゲート監督もそのような人たちに対して「我々はより寛容で理解ある社会へと向かっていることは明らかであり、私の選手たちがその重要な一部となることは間違いない」と訴えかけている。

まとめ


このようにサウスゲート監督は選手のケアからモチベーション向上、一人の人間として選手をリスペクトしながら守り、ピッチ外の監督、あるいはメンタルのコーチとしてもイングランド代表を牽引していることがわかるだろう。

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