デカモリシ

今回は、「デカモリシ」でお馴染みの元Jリーガー、元日本代表FW森島 康仁さんにインタビューをさせていただきました。

森島さんは、滝川第二高校からセレッソ大阪に入団。その後は最も長く在籍することになる大分トリニータを経て、川崎フロンターレ、ジュビロ磐田とJ1の常連クラブでプレーします。

しかし、ジュビロ磐田での最終年に戦力外通告を受け、翌年にはテゲバジャーロ宮崎(当時はJ5にあたるリーグに所属。現在J3)に移籍。JFL昇格に貢献したのち、栃木シティ(当時の栃木ウーヴァFC)、藤枝MYFCを経て、2021年限りで引退されました。

このようにさまざまな経験をされた森島さんですが、現在は「フォワード専門アカデミー」を開校されています。

カタールワールドカップをフォワード目線で振り返りながら、現在日本のフォワード育成に足りていないことなどを語っていただきました。

━━━フォワード目線でカタールワールドカップはどう見られましたか?

前田大然選手、浅野拓磨選手が得点をとったのは素晴らしいことですが、やはり悔しい思いも大きかったと思います。

前田選手は常にゴールを狙っていましたし、浅野選手は途中出場であのような素晴らしいトラップをしてノイアーのニアをぶち抜きました。

フォワード目線で見てみると、フォワードというのはGKを除いて一番ボールを触らないポジションです。そして、ディフェンスラインの狭い場所をこじ開けてゴールを決めなければなりません。

この点においては、一度も出場することはありませんでしたが、町野修斗選手に期待していました。彼が北九州に所属していた時に対戦したことがありますが、万能なFWだという印象でした。

━━━フォワードが最も意識しなければならないことは何ですか?

サッカーはシュートで終わることができれば線でつながります。これまでの経験から言うと、結果を逆算してどのように考えていくかが大切だと思っています。

昔の自分は早くボールを出してくれという考え方を持っていましたが、ベテランの域に入ってきたときに、自分がゴールを取るためには何をすれば良いのだろうと考え始めました。

「ここにボールがこぼれてきたら次どうする」などのシミュレーションを頭で考える必要があります。

基本的に目の前にボールがあれば相手は後ろに動かずボールを取りに来るので、そこに対して背後はチャンスになります。

ただ、近年は大きいDFも多いので、簡単に背後は抜けさせてくれません。そこで、触られないようなチェックの動きなどを意識する必要があります。

この点で言うと、エンバペ選手は非常に上手いと思います。裏に行くために一度下がってきて、一気に抜け出します。アルゼンチンとの決勝で決めた2点目は特に印象的でした。オフザボールの動き、ボールを受けるための動きはとても大切です。

自分が前にいるのか、後ろにいるのか、中央にいるのか、サイドにいるのかなどによっても考え方が大きく異なります。ボールを受けて離した瞬間からオフザボールになるので、その瞬間から意識しなければなりません。

日本代表でも、スペイン戦の2点目を決めた田中碧選手の動きが印象的でした。普通ならボールがラインを割ると思って止まるようなところですが、「来るだろう」と考えてゴール前まで詰めるのもオフザボールの動きです。

━━━今大会で誰が一番オフザボールに長けていると思いましたか?

エンバペですね。非常に駆け引きをしていると思います。裏が空いた瞬間にトップスピードで突破するので。得意な部分をストロングポイントにしているのは強いと思います。

━━━選手たちは試合中からいくつもプレーの選択肢を持っているのですか?

自分はそういう感覚です。この選手にボールがいったら、チェックを入れて下がろうなどを考えながらやっていました。

キャリアの最初のほうは全然できなかったのですが、徐々にできるようになってきました。

フィジカルコンタクトを少ないようにするというのは、やはりエンバペやメッシは上手いと思います。

メッシでいえば、決勝での2点目につながる起点となったプレー。あれは絶対に予測していたと思います。予測していなかったらインターセプトを食らっていたでしょう。

━━━あのゴールは周りも連動していましたね。

そうですね。縦パスは周りが連動するパスであることが多いです。サッカーでは、横に移動するのは簡単ですし、横パスは逃げることに近い場合があります。

その面で言うと、アルゼンチンやモロッコは優れていました。

━━━今森島さんはフォワードに特化したアカデミーを開催されていますが、どのようなものなのか教えていただけますでしょうか。

日本ではストライカーが育ちにくいというのが現実です。日本代表が発表される際も、「MF+FW」とセットで扱われることも少なくありません。ワクワクする部分がゴールゲッターではなく、ファンタジスタになる傾向にあると思います。

ですが、サッカーの本質はゴールを奪うことです。日本ではトータル的に教えて、何かに特化したことを教えるという場面は多くありません。

そんな中で、自分がフォワードとして足りなかった部分や後で気づいた部分を教えていきたいと思い、このアカデミーを立ち上げました。

ここではオフザボールの動きを重点的に教えています。シュート練習よりも、オフザボールでマークを外してからシュートするという練習に取り組んでいます。あとはポストプレーや手の使い方、身体の入れ方、ヘディング、プルアウェイなどの練習も行います。

プルアウェイとは、相手のマークを外すために有効な動きの一つですが、現役の日本人選手でいえば、古橋選手などは試合中よく行っています。

手の使い方でいえば、南米の選手は上手だと思います。触角のように使ってきます。後ろは見えにくいですが、手を使うことで距離感などが分かるので、相手選手を認知するのに有効です。

また、手を後ろに伸ばして、脚を前に伸ばせば、相手からより遠い場所にボールを置くことができます。

これらは基本中の基本ですが、繰り返し行うことによって落とし込み、実践に繋げることができればいいなと思います。

━━━オフザボールではないですが、メッシがクロアチア戦で独走アシストを決めた時も手の使い方が上手かったのではないでしょうか。

そうですね、あれは見事でした。相手は押されると苛立つかと思いますが、それで押し返された時に反動でドリブルをしたりできます。一方で、押しすぎるとファールになるので、DFからするとかなり難しいでしょう。

━━━やりすぎの例で言うと、決勝でのフランスの1点目につながったプレーではないでしょうか。

そうですね、(オタメンディがコロムアニを倒したプレーは)押しすぎですね。

━━━最後に一言よろしくお願いします。

サッカーでは、使えるものは使わなければなりません。例えば、2本ある脚も、両方使うことができればより幅が増えます。手も相手を抑えながら守るということもできます。ある武器は何でも使うべきだと思います。

サッカーには技術点も芸術点も3ポイントシュートもありません。目に見えるのはアシストかゴールのみです。

フォワード専門アカデミーでは、ゴールやアシストを記録したいような選手に来てほしいと思っています。